夢を見ていた気がする…
真夜中にルルーシュが現れて、二人で話し込んで…
僕はまだ寝起きのはっきりとしない頭で、天井を見るともなしに眺めながら昨晩の事を思い返す。
そう言えばルルーシュを隣に寝かせたなと思い出し、隣を見ると、いつもの朝通り、誰も隣に居なかった。
やっぱりあれは夢か…
そう思い、起き上がると美味しそうな匂いが鼻を擽った。
誰かが朝食を作ってくれている?
部屋には僕一人しか居ない筈だ…
不思議に思いながら簡易キッチンへと脚を運ぶと、そこにはジーンズにシャツと言ったラフな格好の上に黒いシンプルな造りのエプロンを
付けたルルーシュがフライパンで卵焼きを焼いていた。
そして僕が起きてきたのを横目で捕らえると、今度はしっかりと此方に顔を向け、天使の様な笑顔をしてくれる。
「おはよう、スザク。冷蔵庫の物を勝手に使わせて貰ったぞ」
え…?
勝手にって…
冷蔵庫の中に何かあったっけ?
お情け程度の調味料と、卵があったか無かったかぐらいしか記憶に無いが、テーブル(と呼べるかどうか怪しいテーブルだ)の上に
きちんと朝食が乗っていた。
「ねぇ、ルルーシュ…?冷蔵庫にこんなに食材あった…?」
「いや、そんな訳無いだろ」
卵を焼きながらはっきりとそう言い放つルルーシュに僕は苦笑しながらも、やっぱり冷蔵庫に食材が無かった事を再確認させられた。
「あまりにも食材が無いからコンビニまでちょっと行ってきたんだ。
仕事に行くんだから朝御飯はしっかり食べて行かないと元気が出ないんだぞ?ほら、さっさと顔を洗って来いよ。朝食にするぞ?」
「はいはい、分かったよ」
言われるがままに顔を洗い、朝食の前に座る。
献立はトーストにスクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコンに、レタスとプチトマトが添えられている。
「簡単で済まないな。本当は和食にしてやりたかったんだが、コンビニじゃ米や魚なんて売ってなかったから…」
「ううん、美味しそうだし、何よりルルーシュが作ってくれたのが嬉しいよ」
目の前には美味しそうな朝食、向かいには頬杖をついて此方の様子を興味津々に伺う愛しい人。
なんか新婚生活みたいだとか思っちゃったのは言わないでおこう。
言ったらこの恥ずかしがり屋さんはきっと慌ててそっぽを向いてしまうだろうから。
そしてついに、食べるのが勿体無いけど、でも食べたいから僕は卵に箸を入れる。
箸を入れた瞬間にフワフワの卵は湯気を発しながら分裂した。
見た目以上に柔らかい。
そして口の入れると、またこれが絶品だった。
だから僕は思わず叫んでしまう。
「美味しいっ!こんな美味しいスクランブルエッグ久しぶりだよっ!」
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないって!」
ルルーシュはクスクス笑うけど、最近ろくな朝御飯を食べていないし、
ましてや自分で作るとしても目玉焼きぐらいだから本当に久しぶりだったのだ、スクランブルエッグは。
ルルーシュの作ってくれた物だと思うとどれも美味しくて、朝っぱらだと言うのに僕はがっついて食べていたらしい。
ルルーシュが苦笑しながらそんなに慌てなくても…と何度もたしなめてくれた。
「ごちそうさま!」
「お粗末様でした」
食べ終わり、僕は出掛ける準備に入る。
今日の予定は会談に出席する事と、新しい法律の検討会にも出席しないと…
ゼロの服を着る際は最期にタイをしっかりと絞めないといけない。
タイを結びながらしっかり着れているかチェックしようと鏡の前まで歩いていこうとしたら、
洗い物をしてくれていたルルーシュが、手を止めて近付いてきた。
「タイが曲がってるぞ」
「え?そう?」
「あぁ」
そう言いながらタイを結んでくれる。
「よし、出来た。行ってこい」
「ありがとう」
なんか本当に仕事に行く旦那さんを見送る奥さんみたいだよ、ルルーシュ。
そう思ったから僕はついついルルーシュの腕を掴み、自分の腕の中に引き寄せてしまった。
「な…何するんだ!?」
抵抗されたけど、ちょっと無視。
「行ってきます、ルルーシュ」
軽くルルーシュの唇にキスをする。
新婚さんなら定番じゃない?
「なっ…何するんだ!」
「行ってきますのキス。じゃあね、行ってきます」
真っ赤になったルルーシュを解放し、小脇に抱えていた仮面を着ける。
そして僕はルルーシュを残して部屋を去るのだった。
=続く=
**あとがき**
仕事にはきちんと行ってもらいますよ、枢木さんには(笑)
なんか本気で新婚生活する気らしいよ(笑)
残りの日数も書くのが楽しみです(>_<)
(それを人は自己満と言うww)
08.11.11